きみのへたっぴな溺愛

揺れるポニーテールに、困り顔。
目に入る白い腕や脚。

それらに視線が釘付けになっていると、少し息を切らした衣織ちゃんがやって来た。


「遥斗くん……大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」
 
「でも…火傷なら…冷やした方がいいよ…?」

「う、うん…」


上目遣いの衣織ちゃんを前に俺は大人しく頷いた。


「衣織ちゃん、悪いけど水道連れて行って?」

「え?う、うん…」


戸惑った彼女は夏生を見て、再び俺を見る。


「あ、じゃあ…冷やしに行こうかな」


ここは有り難くふたりの言葉を受け取ろう。

衣織ちゃんは本当に心配してくれてるし、夏生はふたりになれるように気を利かせてくれた。


「わり、ちょっと行ってくるわ」と夏生に言えば、「ついでに頭も冷やしな?」と余計な一言が返ってくる。


「…ありがと」

「行ってらっしゃーい」



夏生の声を背に歩き出す。

水道には幸い誰もいなくて、心の中でガッツポーズをした。

これなら、衣織ちゃんとゆっくり話せそうだ。