きみのへたっぴな溺愛

…そうか。

俺が連絡をしないことで、もし衣織ちゃんも寂しい思いをしていたら……それは嫌だ。

あとで彼女とちゃんと話そう。

そう決心していたら、ボワッと目の前の炎が燃えあがった。



「あ゛っつ…」

「大丈夫?冷やしてきな」

「おー。一瞬だったから大丈夫」


手にピリッとした熱さと痛みを感じたけど、平気だろうと判断する。


「ってか、俺の声ひどくなかった?断末魔の叫びみたいな」

「団地妻の集い?」

「はぁ?んなこと言ってねーわ。断末魔だよ、断末魔。…なに団地妻の集いって。さっきから空耳すごくない?」


確かに「だんまつま」と「だんちづま」は発音が似ているけど、その違いに笑いがこぼれてしまう。

夏生も面白かったのか、ニヤニヤと笑っている。


「欲求不満なのかと…」


あー…。そういうこと。

面白かったわけではなくて、俺をからかいたいだけか。


「……夏生と一緒にしないでくれる?」

「はーい。…あ、ほら。衣織ちゃん心配してるよ?」


夏生がくいくいと顎で合図をする。

その先には、こちらに走ってくる衣織ちゃんがいた。