10分休み。

「ねーねー」と夏生くんに肩をちょんちょんとされた。


「衣織ちゃんって、髪の毛ちょっと茶髪だよね。地毛?」

「うん、地毛だよ。お母さんに似てて」

「へえーいいね」

「ありがとう」


お母さん譲りのダークブラウンの髪は自分でも気に入っている。

ちょっと癖っ毛でクルッとしているけど、こうして褒めてもらえるのは嬉しい。



「夏生くんは染めてる?」

「そうそう。高校入学を機にガッツリ」

「すごい。似合ってるね」

「まじ?」


「うん」と頷いた。

夏生くんのミルクティーベージュと表せるような髪は、ゆるくウェーブがかかっていて、おしゃれでモデルさんみたいだ。

まじまじと右隣にいる彼を見つめていたら、「夏生くん」と上から声がかかる。


「おっ、未緒ちゃんじゃーん」


顔を動かせば未緒が私の前に立っていた。


「呼んでるよ?」

「え?」


首を傾げた夏生くんに、ドアの方を指差す未緒。



「呼んでる…って呼び出し?」

「………さあ?」


未緒も首を傾げる。