ウキウキしながらエレベーターを降りる。


「あっ、衣織ちゃん」


すぐに聞き慣れない低い声に呼び止められた。

振り向けば、黒髪短髪の男の子が立っている。

だれ…?


「はい…」

「ちょっといい?」

「えっ…と…」


戸惑う私をよそに、男の子はクルリと体の向きを変える。


「…先、部屋行ってるね?」

「あ、うん…ちょっと行ってくるね」


まりやと逆方向に歩き出して、男の子の背中に着いていく。


そういえば、男子は女子の階に来ちゃいけないのに…なんて、先生の言葉を思い出した。

それは逆も然り。

男女で部屋の階が分かれていて、行き来しないようになっている。

そう考えると、林間学校中、遥斗くんとはなかなか話す機会がないかもしれない…。


「急にごめんね?」


突然足がピタッと止まり声がかかった。

反射的にビクッと驚いてしまう。



「えっ?あ、いや…」



頭に浮かんでいた遥斗くんを一旦振り払って、男の子を見上げる。