「ごちそうさまでした。すっごいうまかったです」


遥斗くんは丁寧に手を合わせた。

その言葉にお母さんは嬉しそうに頷く。


「あっ、そうだ、衣織。食器洗いお願いしていい?アタシ、遥斗くんと少しお話ししたいなー」

「えっ…でも…」


普段なら頷くところだけど、「遥斗くんとお話ししたい」の部分が見事に引っかかる。

彼に視線をやれば、コクコクと頷いていた。


「…わかった」


お母さんの満面の笑みにやられた私は、大人しくキッチンへと向かう。

スポンジを手に取り、ジャーと水を流して、食器を洗い始めた。