「お母さん!」


そう声に出していた。


「あら、衣織…って」


私を見て、それから遥斗くんを見て…。

お母さんはニコッと笑って小指を立てた。


「コレ?」

「ちょっと…」


小声だったけど全然隠せていないし、その表現は古いし…。

おまけにそのジェスチャーは一般的に彼女を表すよね…?

って、お母さんは久しぶりに会うのにツッコミどころ満載だ。


隣の遥斗くんに視線を移せば、思った通り目を丸くしている。


「あ、えっと…私のお母さん、です…」

「え?あ、そうなんだ…。えっと、こんにちは」


微笑みとともに、ぺこりと会釈をした遥斗くんに対して、「こんにちは〜」とお母さんはのんきな声を出す。


するとエレベーターが降りてきた。

戸惑いつつも、それに乗り込む。  

ボタン付近に立ったお母さんと、その後ろに私と遥斗くん。


「5階っと。…って、ん?衣織まさか…アタシのいない間に連れ込む予定だった?」

「えっ…」


クルッと振り返ったお母さんの「キャーーー」っという一際大きな声がエレベーター中に響き渡った。