「後ろ…乗る?」

「あっ、うん…。ありがとう」

「…どうぞ」


「ありがとう」と頷いて、遥斗くんの自転車にふたり乗り。

2回目のそれは、相変わらず嬉しくて恥ずかしい。

おずおずと彼の腰に手を回せば、キーっと自転車が動き出した。


生暖かい風が私たちの髪を揺らす。


…さっき、遥斗くんと…き、キス…しちゃった…。

たった数分前に、唇に触れた感触を思い出す。

ほんの一瞬だったけど、柔らかくて…って、ハッとして俯く。


鏡を見なくても顔が真っ赤だとわかるから、余計に恥ずかしさが増す。

こんな状態では、まともに会話をできる気がしない。

だから、ふたり乗りでよかったと思う。


一応、ロッカーから取り出した古典の教科書は遥斗くんのスクバにお邪魔している。

帰ったらちゃんと勉強しよう…と気を紛らわせていたら、マンションに到着した。

私も遥斗くんも、あまり目を合わせず沈黙を連れたまま歩いていると。


エレベーター前でバッタリ。