…残った私と遥斗くん。

ほわほわとしていた意識が、シャキッとしだす。

さっきまでの出来事が急に恥ずかしく思えて、「私たちも帰ろっか…」と言って立ち上がった。


「…そうだね」

「あっ…私も置きっぱの教科書取らないと…」



口実のことを思い出して、怪しまれないようにロッカーへと向かう。


だけど、教室を出る間際。

ぐいっと腕を引っ張られた反動で、体がよろける。

反射的に目を瞑って…。


「っ…」


パチっと開けた時には、遥斗くんの顔が今までで一番至近距離にあった。


「隙アリ……」

「…へ」


そっと腕と体を離した遥斗くんが、教室を出て行く。

その背中を見ながら、無意識に指を口に当てて、ボン!ともえるような熱さを感じた。