「いったあ。なんで叩くの?」

「…わりぃ。なんか、つい…」

「もー衣織ちゃん、こんな男やめたら?」

「やっ…えっと…」


遥斗くんに頭を叩かれた夏生くんが私に視線をやった。

急に会話を振られて、あたふたとふたりを見上げる。



「夏生どうしたの?」

「スタディーなんちゃらがないことに気付いて。あ、あったあった」

「そっか」


遥斗くんは「ごめん」と、もう一度小さく謝った。

夏生くんの手には言葉通り、取り出された冊子がある。

夏休みの宿題のひとつだ。



「んじゃーオレは帰るわ。ってか教室あつー。誰かさんたちのおかげでオレが爆発するアツさだわ」


ひとりごとのように言いながら、夏生くんはスタスタと歩いていく。


「お前らも干からびる前に帰れよー」


そんなことを言い残して、あっという間に前のドアから出て行ってしまった。