「……それは俺の頭の中の天使寄り?それとも……悪魔寄り?」

「天使と悪魔…ってなに…?」

「天使は……気持ち的に…って言うか、ふつーに仲良く…で、」

「…うん」



言葉を区切った遥斗くんは、あっちを見たり、こっちを見たり。

キョロキョロと視線を動かして、「ふー」と息をはいている。


…そんなに言いにくいことなのかな?

悪魔の仲良しって…。え。まさか。

一緒にワルイコトをしましょう…って。

いやいや、遥斗くんに限ってそれはない。


「えっと…」
「あの…」


遥斗くんと私の戸惑ったような声が重なった。

それからもうひとつ。

ガラガラガラと比較的大きな音も聞こえた。


「…」

「…」


「あっ、お邪魔しまーす。どうぞ、続けて?」


前のドアからひょこっと現れたのは夏生くんだった。

明るい顔と明るい声を、驚きながらも捉える。


夏生くんは、石と化した私たちを気にする素振りを見せず、ズンズンと教室に入って来た。