「…そんな喜んでくれんの？」

「嬉しいよ。…ちょっと“い”が多かったけど」


正直に言えば、遥斗くんは、ははって声を上げて笑う。


「あー…そうだ。ついでに言っておくと」

「うん？」

「補習頑張れたのは、間違いなく衣織ちゃんのおかげだから。『頑張って』って言ってくれて嬉しかった」

「っうん…」



今度は真っ直ぐ視線が重なった。

「嬉しかった」と彼は笑うけど、それは私の台詞だ。

サラリと呼ばれた名前も、遥斗くんの瞳に私が映ってることも、嬉しい。



「遥斗くんともっと仲良くなりたい…」

「………え？」


遥斗くんはポカンと口を開けた。

それを見て、思っていたことをそのまま言ってしまったのだと気付く。


「仲良くって…え、仲良く？」


本心だから、「うん」と頷いた。　

だけど、言わない方が良かったかもしれない。


考え込むように口を手で覆った遥斗くんを見て、そう思った。

少しの間を置いて、恐る恐ると言ったように彼は口を動かす。