「あー、なんか案外普通だった。しばらく数字はいいかなって感じだけど」

「そっか」


ガタッと遥斗くんが椅子を引いて、前の席に座る。

ほぼほぼ同じ高さになった目線。



「あとは…なんかF組の子がとにかく元気で」

「リカちゃん…?」

「あっ、そう。リカちゃん知ってた?」

「うん、知ってる…」



と頷いてはみたものの、考えてみれば、直接話したことはない。

プール掃除の時と、この前と、今日。

彼女を見たのはたった3回。


「そのリカちゃんにすごいバカにされて。悔しいから真剣に補習受けてたよ」

「そうなんだね…。遥斗くん…」

「ん?」



遠目に見ていた彼女がなぜか近く感じる。

目を引く存在だから?

名前を知っているから?

…遥斗くんが“リカちゃん”と呼ぶから?



「私も…名前で呼んで欲しい……です」

「えっ…?」



リカちゃんは明るくて優しくて、私も惹かれる存在だけど。

…それとこれとは別。

遥斗くんが他の女の子と楽しそうにしていたり、名前を呼ぶのは、どうしたって嫉妬してしまう。