きみのへたっぴな溺愛

「あの…」と意を決して見上げる。


「補習が終わるまで待っててもいい?」

「う、うん…。いいけど…、いいの?」

「うん。遥斗くんと一緒に帰りたくて…」


「だめ…?」と聞いてみた。
その声は微かに震えてしまった。

もし、「ダメ」と断られたら、頷いて笑顔。

そう頭の中で唱える。


遥斗くんは一瞬「う゛」と顔を歪ませて、「も、もちろん…」と首を縦に振ってくれた。


「終わったらダッシュで教室行くから」

「…ありがとう。待ってる」


走らなくていいよ。と思うものの、ここは笑って頷いた。


「じゃあ…あとで」


席に戻っていく遥斗くんの背中を見ていたら、リカちゃんともう一度目が合った。

急いで「ありがとう」と口を動かして、頭をペコっと下げる。

眩しい笑顔で親指を立ててグーサインを見せてくれた。


うっ…優しい。

ブンブンと手を振るリカちゃんに、私も手を振りかえして教室に向かった。