遥斗くんは机に頭を乗せていて、寝ているみたいだった。

無意識のうちにホッと息をつく。


ザッと見渡してみれば、20人くらいの生徒がいて、先生はいない。

相変わらず頬杖をついてる子や、スマホをいじっている子、お喋りをしている子…。


もう終わったのかな?

そう不思議に思っていると、パチっと弾かれるようにリカちゃんと視線が重なった。

彼女はニカッと笑い、遥斗くんの机をバシバシ叩く。

それに驚いていたら、「んー」と上半身を起こした彼の目が私を捉える。


「えっ」と遥斗くんが、驚いたのがわかった。

それもそうだ。苦笑しつつ、右手を小さく上げる。

すぐに遥斗くんはこちらまで歩いて来てくれて、ゆっくり窓を開けた。


「…星野さん。どうしたの?」

「あ、えっと…ロッカーにある忘れ物を取りに来て…」


って言うのは、口実で。


「…補習、終わった?」

「いや、補習は今からで…。今日だけ時間ズレてるんだよね」

「そうなんだ…」


てっきり、毎回同じ時間に行われるのだと思っていた。

だから自然と終業式の日を思い出して来てしまった。