きみのへたっぴな溺愛

廊下側の1番前。ここからは1番遠い場所。

そこで、遥斗くんは隣の席に座る子とお話をしていた。

見覚えのある女の子…、リカちゃんだ。

リカちゃんは今日も、髪色に負けないくらいの明るさを放っている。

…ふたりとも大きく口を開いて、頭上で輝く太陽みたいな笑顔。


ミーンミーンミーンと。
耳を澄ましても聞こえるのはセミの声だけ。

なに話しているんだろう。…とか。
遥斗くん楽しそう。…とか。

…なんだろう。特別親しい雰囲気でも、触れ合っているわけでもないのに。

ふたりはただお話しているだけなのに、ドロドロとした感情に蝕まれていく。


いやだ。そんなに笑いかけないで。
…なんて醜い気持ち。

自分の心の狭さが1番嫌になる。


「遥斗くんの隣にいるギャルって、F組のリカちゃんって子?」

「そうだね」

「へー…。気にすることないよ、衣織」

「………えっ、あ、うん」


返事が咄嗟に出来ず、口をキュッと噛んでいたことに気付いた。

声も予想以上に小さくなってしまった。

急いで笑顔を貼り付ける。