「大体さあ、ファーストフード店なら集中できるって意気込んでたのにな?残念だな?」

「うん。教室だと他に残ってる奴らの視線が気になるし?家にふたりきりは、色々アウトでしょ?残るファーストフード店なら、集中できると思ったんだよ」

「それを本人の前で言ってんのがすげーわ。なんて言うか、やっぱ遥斗はイケメンなのに残念で安心する」



ブツブツと呟く遥斗くんに、乾いた笑みを浮かべる夏生くん。

私はと言うと、口を挟むタイミングが分からず、首を横に傾げる。



「あっ、いや、星野さんが教えてくれたとこは唯一ちゃんと解けたし。分かりやすかったし、本当ありがと」



遥斗くんが慌てたように立ち上がって、私を見る。


「う、ううん。全然。…補習、がんばってね」

「がんばる。ありがと」

「うん」

「うん」

「………遥斗、補習遅れんぞ」

「あ、やば。行ってきます」

「あ、いってらっしゃい」


荷物をまとめて、右手を上げた遥斗くんは、そのままビューっと教室を出て行ってしまった。