「あ、あのっ…どこかお探しですか?」


タタって駆け寄り口を開いた。
声がわずかに震えてしまう。


「あっ、このお店を探してる…みたいで」


彼は手にしていた紙を見せる。
おばあちゃんも「ごめんなさいねぇ」と私を見上げた。


「いえ…」


小さな紙には、この駅周辺の地図が書かれている。
“←ココ!OYATSU”の文字も。


「あっ、もしかして…」


ついこの間、新しくオープンしたOYATSUというカフェだろうか。そこなら、場所がわかる。


「あそこの道を入って、えっと…」


路地裏にあるそこは、隠れ家的なお店。

わかりにくい場所だから、説明が難しい。


「あの、よかったら、案内しますっ」

「えっ」
「あらまあ、悪いねえ」


驚く彼と、「お願いしようかしら」と、にこにこ笑うおばあちゃん。

頷いて遥斗くんに向き合えば、ニッと笑ってペコッとお辞儀をされた。


彼は柔らかな雰囲気に包まれている。

その空気に触れた瞬間にはもう、「すき」という気持ちがパッと顔を出した。