きみのへたっぴな溺愛

視線を動かせば遥斗くんと目が合う。

彼は口をタコみたいに、「う」の形にして。
手を胸の前でグーにしている。

…グーを出せってこと?

D組の男の子からは、遥斗くんが見えてないだろう。

首を縦に振って、最初はグーのあと、そのままグーの手を出した。


「…」

「…」


「えーっと…じゃあ、C組の2班、ゴミ捨てよろしくー」

「はい…」

 

先生に返事をしたら、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。


「ゴミ捨ては私が行くね」


班のみんなにそう言えば、彼女たちはニヤニヤしていて。きっと、私と遥斗くんのやり取りを見ていたんだ。


「ありがとう、衣織ちゃん」

「お願いしてもいいの?」

「ここは遥斗くんと行ってきなよー」


「う、うん…」と頷いたら、ちょうど遥斗くんと夏生くんがこちらに来た。
 

「ご、ごめん…」


開口一番謝った遥斗くんに、「大丈夫だよ」と返す。


「ゴミ捨ては遥斗と衣織ちゃんに任せよー」


夏生くんのその言葉に、みんなは「お願いしまーす」と言って徐々に美術室を出て行く。