きみのへたっぴな溺愛

「お前の彼女悩んでるよ?」
「ほんとだ…かわいー」
「…なんか腹立つ」




「っちょっといま…」

ガタッと視界の端で彩香が立ち上がった。


それに驚いて、首を傾げながら彼女を見る。

彩香の隣に座る真由が「どうしたの?」って聞くけれど。
彩香は真由を見ることなく、ガバッと振り向いて「夏生くん!」と叫んだ。


名前を呼ばれた夏生くんはビクッとしつつ、顔を上げた。


…あ、遥斗くんも目を丸くしている。



「はいはーい。彩香ちゃんどうしたー?」

「…いまの言葉もう一回言って?」

「いまの言葉?」

「お前の彼女って…言ったよね?」

「あー…」


固まる遥斗くん。あははと笑う夏生くん。
ふるふると口を開く彩香。

その3人を順に見る。

耳に入ってきた会話にドクッと脈が速くなった。


「遥斗くん…彼女いたの?」


彩香の声がポツンと落ちる。

大きくはない、むしろ小さい声だったのに胸に響いた。

それは多分、他の子も一緒。

私の前の席に座る、大人しい鈴木さんまでもが身を乗り出している。