「いや本当ごめん。星野さんを怖がらせたいわけじゃなくて…えっと…」
 


再び俯いた私の耳に遥斗くんの声が届く。

優しいけれど、確実に焦りを含んだ声色。

…そうだよね。遥斗くん困ってる。

困らせたいわけじゃないの。ただ…。



「…星野さん」



いつもと同じ。柔らかくてあたたかな声。

誘われるように顔を上げる。




「好きです」



視線が交わったのと同時。

はっきりとその言葉が聞こえた。

「え…」と声にならない声がもれる。



「っ、あっ、ごめん…っ!泣かせるつもりじゃ…」


慌てた遥斗くんを見て、涙がこぼれたことに気付いた。

自覚してしまえば溢れる一方で、頬の上を雫がポタポタとおちる。


「ちが、ちがうの……」


自然と言葉が出るけど、それ以上は続かなかった。

言いたいことも、言わなきゃいけないことも、考えられずに口をパクパクさせる。