全速力で廊下を駆けて、階段をドタバタと降りる。

下校するであろう生徒たちが、すれ違いざまに見てくる。

おまけにヒソヒソと何かを言われているけど、気にしていられない。


俺の頭の中は星野さんでいっぱいだ。

裏庭を歩く星野さん。

そして、彼女の隣には水瀬くんもいた。

なに話しているんだろう、とか。
星野さんは水瀬くんが好きなのか、とか。

気になることは多いけど、それ以上に。

どうしても今行かなきゃいけない気がした。


「…ハァ、ハァ」


上がった息を整えつつ、裏庭を見渡す。

けれど、星野さんと水瀬くんはいない。

…あっ、発見。

裏庭のもっと奥にふたりはいた。

なりふり構わず、彼女たちを引き止めるために口を開く。



「ちょっと待った」



…ちょっと待った、俺。

この台詞は果たして正解なのだろうか…。