十五年も片思いを続けていることについて、それを知った人は可哀想なものでも見るような目を向けてくるか、理解を示すふりをして小馬鹿にしてくるか、最初こそ否定しないものの、最後は呆れるかのどれかだった。別に話した相手が悪かったとは思っていない。なにせ十五年のうちの半分、七年は彼女に会ってすらいない。

 七年前に彼女は結婚した。不思議とそれ以来会いたいとも思わなかった。当時はやっとこの苦しい思いから開放されるのだと安堵すらした。けれど彼女に対する恋心は消えることなく、その後もずっと俺の心に棲み続けた。他の女性と付き合ってみたり、一時はそれなりに遊んだりもしたのに、彼女を想うようにほかの女性を愛することはできなかった。彼女への恋心は誓いを超えて、呪いのように俺の心を縛りつけた。

 自分でもこんな気持ちは馬鹿げていると思っていたし、早く忘れたいと思っていた。けれど一方で、この気持ちがなくなってしまうことをどこかで恐れていた。無くなってほしくないと、願っていた。

 それなのに。 

「雅俊くんだー、久しぶりだね」

 七年ぶりに聞いた彼女の声。サークルのOB会にはもう何年も参加していないし、俺と彼女では学年も違うので、もう余程のことがなければ会うことはないだろうと思っていた愛しい人が、僕の目の前に現れた。

「久しぶりです、こんなところで瑠璃子さんに会うなんて驚きました」

 今日の結婚式に彼女がいることは予想していなかった。新郎は大学の友人であるけれど、新婦は違うし、新郎が瑠璃子さんと知り合いだという話は聞いたことがなかったからだ。

「そっか新郎くん私たちと同じ大学だものね。私は新婦の里美ちゃんと勤めていた会社が一緒でね、退職した後も付き合いが続いていたんだー」
「ああ、なるほど。すごい偶然ですね」
「私も雅俊くんがいてびっくりしちゃった。元気してた?相変わらず雅俊くんは格好いいねえ」
「瑠璃子さんも相変わらず綺麗ですね。俺は仕事ばかりですが、一応元気です」
「私も子育て大忙しだよー」

 彼女の、高く澄んだ声が耳をかすめていく。