強いアルコール感につられて、つい問い詰めるような言い方になってしまった。青木は視線をあちこちに飛ばしながら「こんなこと頼めるの、莉奈しかいないと思って」と答える。

「でもよく考えてみてよ、結婚だよ?紙切れ一枚がとっても重たい意味を持つんだよ?もしも青木に今後好きな子ができたらどうするの?」

 自分で言っていて、自分で凹む。それが私であったならなんの問題もないのに。

「俺は、今後他に好きな人なんてできないよ。勿論、莉奈に好きな人ができた時は別れてもらって構わない」
「それは、ない」
「そっか……」

 私はもう、この十年で嫌というほど知ったのだ。青木以外の男の人に目を向けようと思っても全然ダメ、試しに他の人と遊んでみても全くときめかない。

 もはや青木専用、ちょっと悲しいくらい。そして、そうかとまたしても落ち込む。青木にとっての一生ものの恋は、今でも真由ちゃんなのだ。相変わらず、他に目がいかないくらい。

「私もさ、確かに結婚に関して周りから色々言われて煩わしく思ってるよ。それに婚活してる友達の話を聞くと、恋ができる相手じゃなくて、一緒に生活ができる相手を探してるんだって思う。だから結婚自体には恋とか愛とか必要ないのかもって、思うんだけど。それでも青木とは……」

 できることなら愛し合いたい。

 私からしてみれば、青木の申し出は願ってもないことだ。十年想い続けた相手が自分との結婚を望んでいるのなら、飛びつきたい気持ちもある。それでも、お互い相手がいないから結婚しましょうっていう提案に乗れるほど、私はまだ青木を諦められていない。ちゃんと好きだし、好きだと思われたい。

 潮時なのかもしれない。だってもし今私がこの話を断ったら、友達関係は継続するかもしれないけれど、青木はそのうち本当に誰かと見合いをして結婚してしまうかもしれない。例え青木の中にまだ真由ちゃんがいるのだとしても、私は私の気持ちを伝えないまま、青木の結婚を見送れない。私の告白を受けたら、この結婚話は白紙になるだろうけれど、でもどうしたって、片想いしたまま形だけの結婚なんてしたくない。

 二の句を紡ごうとした私の言葉を、青木が制した。