「悲しい思いをさせるなって言ったのに、結局、俺は莉央を泣かせてしまいました…すいませんって」
「……っ、」
「莉央は信頼できる仲間もとに預けてきました。俺はそばにいる資格はないからって」
「……っ、」
「今頃医者にいって、休んでいるころだと思うんで安心してください。莉央が帰ってきてからもどうか叱らないでやってほしい。悪いのは俺だから。殴ってくれて、構わないって」
「……眞紘っ」
口元を押さえて泣き始める私に、父は優しく、そして困ったように口を開く。
まさか、あの現場を立ち去った後に責任を取ろうと、眞紘が私の家に来ていただなんて思いもしなかったからだ。
そんなの、いいのに。
眞紘が責任を負う必要はないのに。
こんなことまできっちりと…やんなくて、いいのに。
「……殴れなかったよ。だって彼、本当に悔しそうにやるせなそうに…そして苦しげに震えながら何度も頭を下げるんだから」
また────だ。
アイツは言うだけ言って私を泣かす天才だ。
何処まで綺麗に去ろうとすんの?
筋まで通されて、私の中の眞紘への気持ちが無駄に大きくなるだけなのに。

