BLADE BEAST

「────それが俗にいう"人質"ってやつだよ」

「…っ」

「西に自分の組の重要人物を送ることによって、裏切り行為を防止した。まぁ…俺は、家のためになるならと、そしてこっちに来ることで学べるものがあるんじゃないかと思っていたくらい。だからそんなに可哀想なもんでもない」

「……っ、」

「自分で承諾して、決めたこと。…だからどうこう思ったりも特にはしてない。…確かに、こっちの人間とは立場上距離を置いていたことは事実だけど、んなこと大したことなかったし」

「……クソがっ」

「"玖珂"を引き継ぐ心構えも、はなから出来ていたんだよ」






強く言ったその言葉に、眞紘が極道の次期若頭なのだということを改めて知らされたような気がする。

眞紘が……、東で一番の……。

そこまで思って、胸の奥から説明のつかないようなものが次々と込み上げてきて。






「で?………てめえは取り返しのつかないことをした」

「………っ、」

「────許さねえって、……言ったよな?」







地を這うような、畏怖をも孕ませるそれ。

それは極道の道を引き継ぐ者の威圧。

場が────凍った。







「────何の関係もない莉央を泣かせて、傷つけやがった……」

「………っ、」

「てめえだけは…っ………」

「…っ、」

「てめえだけはっ!!!!!!」






殺すような目つき。抉り取るような鋭さと、深い感情の渦。────呑み込むか、呑み込まれるか。その主導権を握っているのは、貴方だった。

荒々しく身を乗り出し、矢神の胸倉を乱雑に掴み取る眞紘。





同時に、普段から見慣れている顔ぶれが切迫つまったような顔つきで入ってくるのを視界の片隅で確認する。

恭平に、豪太に、そしてさっきからずっと聞こえていた…いかにも理性を飛ばした怒鳴り声────その張本人である晄も。



それでも私は、貴方だけを見ていた。