BLADE BEAST

ピクリ、と矢神の口元が引き立った。

長い前髪の奥、射抜くような瞳を向けている眞紘は冷静な怒りを纏いながら一歩ずつ詰め寄ってゆく。




「今頃"向こう"でも、下がお前らのお仲間ってやつを皆取り押さえてる。あ、ここからの逃げ場も全部塞いだから」

「…んなデタラメっ……」

「そう思う?じゃあ携帯かけてみれば?あーでも駄目だ。お前らの携帯はハッキングかかってて全部"ウチ"の幹部にかかるようになってるんだった」

「………っ?!!!」




"嘘だろ?!"と、後ろの男が慌てて携帯を耳に当てれば、"もしも〜し"なんて、やけに陽気なおじさんの声が聞こえてくる。

顔を青くするあたり、眞紘の言うことは本当で。

────私はまた息を呑んだ。





「お前らは終わりだよ」

「…はっ…それでもこっちにはっ……!」





と、矢神は血眼になりながらも、手下によってかろうじて捕らえられている私に目を向けてきた。

だってそのための人質。そこまでの量ではないにしても、決して少なくはない血を流して倒れている私。それに目を向けた眞紘は、凍てつくような殺気をジワジワとより一層強めていった。





「……許さねえ………」





「…ハハッ、どーしたよ?こっちに彼女がいる限りお前は、」

「────大人しく殴られたのは、時間を稼がなくてはならなかったから」

「…っ、」

「……って言ったら?」

「は?」

「ま、この程度の拳、痒いくらいだからいくら殴られても大して変わらないし」

「……っ、」

「ほら。──聞こえんだろ。半端ないくらいの、足音が」