固まって目を見開けば、目の前にはニッコリと笑っている男がいた。
右手には何処から出したのかカッターナイフが握られていて、その側面には妙な光沢を宿している血液が付着しているのが分かった。
タラリ、と頬から何かが落ちてくる。
触れば、ねっとりとした赤が手に付着していた。
「あんまり口開かないほーがいいよ?」
クルクルと器用にナイフを回す男はさも大したことはしていないかのように口角を上げていた。
────………斬った?
ドクドクと心臓が大きく脈を打つ感覚。
深過ぎもなく浅過ぎもしない一筋の斬り込みは、可愛いもんじゃ済まされないほどの流血を作り出していた。
ポタポタと落ちてくるのは自分の頬から流れてくる真っ赤な血。目の前にはカッターナイフをチラつかせてくるイカレタ男。
「さぁ、次はどこにしよっか?」
影を作り、私に馬乗りになって覆い被さる。
ナイフの刃についた血液を、みずからの舌で狂気的にひと舐めすると、狙いを定めたように微笑を浮かべた。

