「────眞紘はそこの次期若頭だよ」
「……っ、」
「こっちのカタギじゃ知ってる人も少ないかな?」
「……」
「あら、ビックリしてる」
「……」
「だから、ま…そういうことだから。ごめんね?"玖珂"を壊す為に、ちょっと利用させてもらう。死んでとまでは言わないけど、多少は傷ついてもらうことにもなる」
「…」
「なーにがいっかなー」
次々に明かされる真実に、私の脳内は追いついていなかった。
ただ分かるのは、もしかしたら今頃眞紘は血相を変えて私を探してくれるんじゃないかってこと。
私が人質になってしまったせいで、アイツが大変な目にあってしまうんじゃないかってこと。
「…眞紘に何かしたら許さない」
「おっと。それ君が言えるの?」
「………許さないって言ってんの」
「うわお、チョー強気じゃん」
逃げることはできないのだと確信をついているのか分からないけれど、両手、両足は幸いにも縛られてはいなかった。
けれど、私の正面にはしゃがみ込んで見下ろしてくるアンニュイな男。こんなの何処からどう見ても勝ち目なんて皆無で。
……だけど、その気持ちだけは変わることがなかった。
もう無理。だなんて思いたくなかった。

