「東側を仕切る巨大な極道組織」
「……そんなっ…」
「そこは三年ごとに同盟にちなんだ"人質"を送る」
「………嘘っ……」
「送るのはどうでもいいとこの人間じゃ意味が無いからね。送られるのは必ず────その家の出身者」
男は、煙を吐き出すと猟奇的に頬を弛緩させた。
「東を取りまとめる極道─────玖珂一家」
上手く息をしていただろうか。
上手く頭を働かせていられてるんだろうか。
何気ない顔でキスをしてくる眞紘。
ささいな変化に気づいてくれる眞紘。
私のことを自然と溶かしてくれる眞紘。
私のピンチにあんなに一生懸命怒ってくれた眞紘。
その裏を、知らなかった。何を抱えていたかなんて、分からなかった。
すましているあの顔の反対側には、ただならぬ孤独があったんじゃないかって。
────私は、まるでアンタの事を知らなかったんだ。

