………今、なんて、言った?
息を大きく呑み込む私に、優雅に煙草を咥えている男は楽しげで、でも僅かにアンニュイな雰囲気を宿しつつまた片手でそれを掴み、息を吐いた。
「…大丈夫。西側には何のキョーミもないから」
「……何言って、」
「キョーミない。現に今は互いに中立保ってるし」
「……ふざけたこと言ってんじゃ、」
「────ふざけてないよ。…これはホントーに」
息をまた呑んだ。
嫌な予感がする。
この前の海での一件も、今起きてる一件も、晄をはじめとする西側に関わる問題ではなかった?
私は──はなから晄に対する人質じゃ……ない?
ドクリ、と胸が騒つく。
男は、口角を上げてニヤリと笑った。
"不安定な東側"
"中立を保っている東西"
"私が特定されるような人物"
"闇の中で静かな狂気を振るう、姿"
"東側から西側へただ一人だけ送り出された、──男"
思考が────ただ一つに結びつく。

