……この前?
なんて、眉を顰めればこの男は頬杖をついて私のことを見下ろしてくるだけ。
「…海で、さ」
だから、それを聞いた時には何かが繋がったような気がした。
この前行った海でのことは、私の記憶の中では完全に薄まっていた。あの日、酔っ払ってまともな判断などできない状態だった私は、妙な男達に呼び出されていた。
──東の人間。
──崩したい。
──壊したい。
理解不能な単語を並べた男たちは……、
「トリガーは、荻原莉央ちゃん。君だよ」
確かにそう、言っていた。
へらりと笑っている男から目が離せない。
だって、思えばそれは全く解決などしてはいなかったからだ。
何のトリガー?
"G.G"を潰すため?
だとしても、あの頃の晄は───まだ分かってなかった。
晄が本当の気持ちに気付いたのは昨日の今日の話。
お気に入りだと口では言ってても、他の女と大して変わらない態度で接していたのだから、そもそも赤の他人がそんな見分けなんてつくわけない。
だって本当に分け隔てなかったんだから。
あの頃の晄はみんなに平等で。
だから、わざわざ私を目をつけるのはおかしい。

