振り返ればそこには、入り口からの光を背中から浴びている…私よりもうんと長身の男が立っていて。
ハチミツ色の明るい髪に、片耳にだけつけられているピアスに、何処かやる気のなさそうな薄っすらと伏し目がちになっている瞳。
────それと、涼しげな印象とは真逆の甘いホワイトムスクの香りがした。
これが眞紘との出会い。
一番最初に知り合ったのは、晄でも、美織でも、他のメンバーでもなく、…眞紘だった。
「…なんか用?」
「は?」
「ここ、俺が使ってる部屋」
「あ、え?ここアンタの部屋なの?」
「……知らないで入ったの?」
あくまでも何を考えてんのかも定かではない声のトーンだった。ポケットに手を突っ込んでいるコイツは、眠そうに欠伸をして、後頭部をポリポリと掻きはじめる。
女たちが放っておかないジャンルの男なのだと、私でも分かるほどの顔面の整い具合だった。
"知らないで"というのは、この男目当てにこの部屋に来る女が多々いるんだということ。
しかもこの余裕そうな態度からも、やっぱり珍しいことではないんだと再認識する。

