"晄"と、はっきり眞紘の口からその名前を聞いたことは思えばなかったように感じた。
その意味にどんなものがこめられていたのかは、眞紘にしか知らないこと。
そこに強い何かが宿っているんだということは、握られている手の力の入り具合と、一点をただ見つめるような深い色の瞳から垣間見得た。
私は何も言わなかった。
このまま眞紘に委ねたいとすら思った。
ねえ、アンタはいつ見てたの?
私が、退屈そうにしながらも家に帰らず溜まり場で時間を潰してたこと。
一人が好きだとか言いながら、誰かに囲まれて騒ぎ立てられるのを好んでいたって。
私は、他人によく言われるようなクールな人間などではなく、本当は人並みに寂しがったり、悲しく思ったり…面倒くさい一面も持ったただの女に過ぎないってこと。
眞紘は…いつから見ててくれてたの?
それはまるで、結構な付き合いにもなる私と眞紘の関係の中で、今、この時にアンタはずっと溜めて我慢してたもんを吐き出したかのよう。
あの時も、あの時も……アンタはしれっとした顔をしながらも、どんなことを思ってくれてたの?
────繁華街のギラついた光が私たちを照らす。
親に言葉をかける間も奪い取って行くように足早に連れられる私だったけど、振り返って家を見る…なんてことを一度もせず、ただアンタの背中だけを見つめてしまっていた。

