BLADE BEAST

それでもなお、涼しげな瞳を向けてくる眞紘はギシッ…とソファーを軋ませた。

やや前屈みになる眞紘。

影が私に向かってかかってゆく。




「触りたかったから」




高すぎもなく低すぎもない中性的な声で、ヤツはまたよく分からないことを言ってくる。



「別に拒否してこねぇし、」

「…」

「…いけねぇの?」



また。クルクルと髪を触ってくる眞紘。

ただ髪を触っているだけ。

私はただ触られているだけ。

それ以上の何でもないと思っている私達の間には、"ただそれだけのこと"というような曖昧な定義が存在する。


深い害を及ぼさなければ、減りもしないし。

思えばそうなんだ。

眞紘も私の性格上、何も言ってこないことを知っているから、いろいろと構うことをしない。