BLADE BEAST

「偶然そこに俺が通りかかったのが運のつき」

「……君はっ……」

「──アンタらがしてたのはそーいうことだよ」




父は何かを言おうとしていたけれど、またグッと口元を噛み締めて悲しそうな顔をし始めた。




「アンタらは二人だけじゃない。莉央もいるんだってことを考えて」

「…」

「アンタらの身勝手な行為で傷つく人間がいるんだって、考えて」

「…」

「それに、アンタらの間には愛って感情はもう無いなのかもしんないけど、莉央に対しては違うんでしょ?」

「…」

「せめて外面だけでも良い親を貫くことはできなかったの?毎日じゃなくてもいい。せめて莉央がいるときだけでも。よくお互いに話し合って頑張ってみようって思うことはなかったの?」

「…」

「ほんと自己中…」

「…」

「そんで挙句にはコイツ、あんな危険な目にあって?」






刹那、眞紘の瞳が鋭利な刃物のように突き刺さる。

空気が二度ほど、下がったような感覚がした。






「…………ふざけんなよ」






最後、眞紘の声はやはり震えていた。

私も心の底から震え上がっていた。

手を繋いだまま、私の隣で立っていてくれる貴方は言えなかったことすべてを代弁してくれた。







それに、分かったの。

嗚咽しながら泣き崩れる母親を見ても、苦しげに眉を顰める父親を見ても、私は────いらない存在ではなかったのだと、分かったから。

だから余計に震えた。

泣きそうになっている親を見て何故か嬉しくなったと思えば、今度は自分の涙腺も刺激されるから意味不明。





決して偽善的な言葉ばかりを並べているわけじゃない。

私も、父も母も、だからこそ胸にささったの。






そして余計に……眞紘のオーラに呑まれてゆく。