BLADE BEAST

「誰にも迷惑かからなければ、それでもいいんじゃないって思う………けど、アンタらは違うだろ」





スッと、眞紘の視線が上がって行く。

何を言いたいのかが分かったらしい父は、グッと口元を結ぶと難しそうな顔をしながら強く拳を握っていた。





「アンタら二人だけだったら身軽」

「…」

「絡むのはアンタらだけだし」

「…」

「別に迷惑かかる人間はいないわけ。……でも、いんだろうが。莉央が、いんだろうが…」




母は少し、泣きそうな顔をしていた。

私にしては今更すぎると思っちゃうようなことでもあったけど、嫌な感じはしなかった。やっぱり実の親。そこまで私は非情ではなかったらしくて。




「莉央、誰もいない家が嫌だからってどんな日でも毎日溜まり場に来てた。…特に楽しそうにもしてないのに、毎日来んだよ」

「…」

「この前は帰りたくなさそうで。親はいない、だから静かだし暇で退屈なだけだって強がってたけど、実際はめちゃくちゃ寂しく思ってんの」

「…」




………それに。


いつの間に、そんなことって。

しれっとした顔で接してきていた癖に、なんで…こんな、こんなにも私のことを知ってるような口の聞き方をすんのよ。

アンタに親のことをいったのはつい最近のことだっていうのに、なんでこんなにも親身になって。



握られる手のひらが心地よい。

強い光を宿す瞳に心臓が加速する。



眞紘は、どんな時も…私を見ていてくれていたんだろうか。




「アンタらは知ってる?」

「…」

「莉央は、星が好き。最近はご丁寧に見上げる人間もいなくなった…"忘れられてしまった"星空。それを眺めることが好き」

「…」

「そっけないように見えて実は面倒みがいいこと」

「…」

「一人が好きだとか言いながら、本当は誰かに囲まれていることが好きなこと」

「…」

「………人並みにショックだって受けるし、泣きそうに身体を震わせることだって……あること」