BLADE BEAST

「………自己中なのも大概にしろよ」








それは、低く震えたような声だった。

ただ一点だけを見つめた眞紘は、長い前髪から覗く尖った瞳で父と母を牽制していた。





「…アンタらさ、自分がどんなことしてるか分かってんの?」

「…」

「別に俺は、人間…皆んなが皆んな理想の関係を築いていけるだなんて生ぬるいことを信じてるわけじゃない」

「…」

「恋愛要素はたかだか三年で切れるらしいし、無理な奴らには無理なんだって思ってる」

「…」

「噛み合わねぇことも出てくるし、気にいらねぇことだって生まれんのは、寧ろ当たり前」




また、眞紘は握った手の力を強くした。

父と母は、家を出るときにはあんなに苛ついた声を張っていたというのに、揃いも揃って二人とも口を閉じていた。

眞紘の言葉は────すんなり胸に入ってくるから不思議なの。

普段はあんなにやる気のなさそうな態度をしてるっていうのに、大事なところで決めてくれるから…私の中の全部がみるみるうちに惹かれていく。



どんどん好きになる。

眞紘しか考えられなくなる。