エレベーターが止まり、扉が開くとまた眞紘は無言で歩き始める。

一度だけ連れてきた時のことを覚えていたんだろう彼は、迷う事なく私の家まで突き進んでいって…躊躇いもなく玄関の扉を開けた。

明かりの灯された廊下。

靴はやはり──二足あった。





「ねっ……眞紘っ……」

「…邪魔するよ」

「ねぇっ……」





まだ、父と母がいる。

さっきまでの会話が頭によぎって後退気味になる私を構わずに引っ張る彼は、やはり吐き捨てるようにして口を開くと靴を脱いで家の中へと入って行く。

どんな顔をすればいいか分からなかった。心の準備ができてない。また、心無い言葉を聞いてしまったらどうしようって。

────それでも、眞紘はこうやって手を握って守ってくれていた。





俺がいるからって。

そう言ってくれてるようで。