BLADE BEAST

眠そうなのかそうじゃないのか定かではない瞳で、何の表情を浮かべることもなくただ私の髪を弄ぶ。

いや、私どうしたらいいか分からないんだけど。


「ねぇ、」

「ん」

「…何で髪切ったって分かったの?晄も美織も気付かなかったのに」


そんな変な沈黙の中、私はふと気になったことを聞いてみた。

ただ髪を弄られる女と、弄る男。それはあまりに変な場面だったけれど、まぁ放っておくしかない。

なんてことを考えながら隣を見れば、眞紘はただジッと私の事を見ていた。

瞬きを、二回。

ただ────ジッ…と。



「……別に」

「はぁ?」


そしてまた私の髪へと視線を向けて、クルクルと器用に弄び始めた。

甘いホワイトムスクの中で、眞紘と何故か二人きり。

なんでこんなにまた心労を極めなければいけないのかと、もうろくな返事は期待しないでおこうと…諦めた頃、




「切ったと思ったから」




返ってきたのはやはり全く答えになっていないそれで。

彼の気まぐれすぎる行動に、私はよくこうやって困らされることがあるのだ。