「お前もどこの馬の骨ともいえないような男と毎晩お楽しみなようだな?欲に塗れて腐りかけているんじゃないのか?」
「……ふざけないで。貴方も人のこと言えないわよね?あーあ。なんで結婚しちゃったのかしら。そもそも仕事仕事、仕事が大事って…ほんと木偶の坊」
「私もお前とは話が丸切り合わないとは思っていた。余程おしとやかで純情な女のほうが居やすいものだ。お前は自分が満たされなくては満足しない、馬鹿で無知な高飛車だな」
「……本当苛つく。だからこの家にも帰ってきたくないのよ」
「ああ。私もだよ。嫌気がさす」
……ギュッと、ドアノブを掴んだまま固まった。
ありえないほどに冷えてゆく身体は、本当に風邪をひいたんじゃないかというほどにクラクラとした感覚を私に与えてくる。
苛立った冷酷な声。舌打ちすら聞こえる。
家に帰って来たくないだって。
お互い嫌いなんだって。
愛人つくって互いに満足してるんだって。
「もしかしたら変わってくれたかもって思ったんだけど、帰ってくるんじゃなかったわ」
「相変わらずなお前に興醒めしたよ」
「「────出会わなければよかった」」
じゃあ、さ。
私は────……

