「そっか…じゃあ莉央とのえっちもちょっとお預けかぁ」
「…」
「ん。治るまでは他の子で我慢する。ほんとは一緒にいるなら一番莉央がいいんだけど、風邪はしょーがないよね。うん」
「…ごめん」
「だからせめて今はずっとギュッて、しててもいい?なんか今、莉央に触りたくてたまんないの」
甘い、甘いその顔。普段と変わらない晄。
一方私は──うまく笑えていたのかすら分からない。どう返事したのかもイマイチ覚えてない。
晄のことが"好き"……。
好き、なんだ。
────好きって、何?
幸せだ。
────幸せって、何?
ポッカリと穴があく。
"そうだ"と信じてたものが、いつの間にか違うものにすり替わっているように。
────私は、強く抱き締められるその感覚を全身で受け止めながら、ただただぼんやりと天井を見上げてしまった。

