BLADE BEAST






その寸前。トン、と彼の口元に自らの手を置いた。

うまく視線を合わすことはできなかったけれど、晄はパチパチと瞬きをしているだけでその表情は明るげのままだった。…だから、安心した。



いや、安心したのだって可笑しい話。自分の彼氏を拒否ったことに変わりはなくて。

咄嗟になんでこんなことを吐いたのかも分かんない。別にキスくらいすれば?って思うことなのに、何故かそれができないと思ってしまった。

なんで…?なんなの、これ。



意味が分からないままにチクリと胸が痛くなるばかり、今まででこんなに考えたことなんて、一度もなかった…。





「風邪?大丈夫?」

「うん。大したことないんだけど、移したく…なくて」

「莉央優し。別に俺は構わないんだけど、莉央がそうしたいって思ってくれるの嬉しいから我慢することにする」

「…ごめん。ありがと。すぐ治す、ね」





ちゃんと、喋れていただろうか。

行き場のないこの気持ちを、ちゃんと隠すことができただろうか。