晄のこと、見てんのにイマイチ焦点が定まってくれない。まるで何処を見てんのか把握すらできなくて。
じわり。
じわり。
────潤んだような、情動に駆られたような瞳を宿す晄はゆっくりと顔を傾けて近寄ってくる。
徐々に伏し目がちになってくると、それをリップグロスが塗られている私の唇へと向けていた。
「好き」
「…晄、」
「なんか、身体がすげー熱い」
「晄、」
「ほんと、なんでだろ。来てくれないかもって思ってた莉央のこと見たら、一気に」
「こ、う」
「ほんと…一番大好き」
寄せられてくる、唇。
何処と無くとろんとした晄は、これでもかというほどに甘い言葉を振りかける。
嬉しいはずだ。
愛されて、嬉しいはず。
これは幸せなことに極まりなくて……。
なのに、
「──ごめん。今、風邪気味なんだ」
私は嘘をついて晄の好意に壁を作ってしまった。

