「やっぱり…いつもつけてる莉央の香水、好き」
「…」
────未だに香水を変えたことに気づかないのも、言ってみればしょうがないことなんだ、って。
だって毎日顔もよく覚えてないような数の女と一緒にいる晄なのだから、次々と香ってくる香水の違いなんて一つ一つ覚えられるはずがないし。
互いにウィンウィンな関係を築いてゆけてるんだからそれでいいじゃんって。
別に望むまでもないこと、で…。
「今日の莉央、いつもよりかわいく見える」
「…晄、」
「なんでだろ…。今日は特に、めちゃくちゃかわいい」
「晄」
「来てくれて、ほんとありがと。やっぱり…莉央が一番だ」
私の心とは裏腹の熱っぽい視線が、絡みついてくる。
頬を覆うその手の温もりも、何故か私の心を苦しく締め上げてくるっていうのは…本当に頭ん中がどうかしちゃってるんだと思う。
いつも通り?──いつも通りってなに?
"好き"は嬉しい。──嘘、何かがポッカリと空く。
……やっぱり、こんな気持ち、私は知らないよ。

