「莉央はクールであっさりとしてるから、思えば最初からそうすべきだったんだと思ったんだよ」
「…」
「何も俺だけの莉央になる必要もなかった。俺にとって莉央はお気に入りに違いはなかったけど、莉央は莉央で干渉されずに楽しみたいこともあるよね?俺が口出すところじゃ、なかったんだ」
「…」
「俺は莉央がいてくれればいいよ。他の女の子も好きだけど、莉央は特別だから──……だから、莉央が不快に思うようなことはするのをやめる」
甘い声が上から降りかかってくるのを、私はどういう目で見ていたんだろう。
この高すぎる鼻も、くっきりとした二重の瞳も、溢れ出るようなフェロモンをまとったような口元も、もう随分と見てきた。
笑顔が見れれば、それが"幸せ"なのだと思ってた。
"一番好き"と言ってくれれば、それは最上級の愛の言葉なのだと思ってた。
あまり私のことを見てはくれなくても、些細な変化に鈍感だったとしても、その時は"愛してくれる"のだから申し分ないことのなのだと。

