BLADE BEAST

"も"。


それは髪のことも言っている。

昼間といい今といい、何故尽く誰でも無い眞紘がそれに一番に気づくのかと。

大して一緒にいるわけじゃないし、馴れ合っているわけでもないし、そもそも周りなんか見てるのか定かではないアンタが。



「柑橘系」

「…」

「前はもっと、甘かった」



ギシッと…またソファーを軋ませて、もう一度匂いを確認しているのか伏し目がちになる眞紘。

"前"って…何よ、と奇想天外すぎる行動に自分の目を疑った。

────玖珂 眞紘は一番と言ってもいいほどに苦手意識を持つ人間だ。



「何。違った?」



何事も見透かしているようなその瞳が、どうも苦手で。