少し、掠れたそれだった。胸をギュッと掴んで締め上げてくるような感覚を孕むような苦しいそれ。
クルクルと指に巻きつけていた髪をほどき、一束掬い上げると小さく口付けを落としてくる。
いつの間にか────猫は何処かへ逃げていってしまった。
「…どんな風に甘えんの?」
「何が───」
「…俺には見せない顔、すんの?」
「眞紘、」
「────んなの、嫌だ……」
抑揚のない平坦な声が僅かに重みをつけて耳の中で反復する。眉を顰め、声にならない声を出す眞紘は何度も髪に唇を寄せて私の心を締め上げた。
────夏らしくない夏の風が吹く。
眞紘の明るい髪を舞い上げるそれは、螺旋状に渦を巻きながら上空へと昇ってゆき…消えた。
「そう思って………いや、思うからこそ、馬鹿なんだよ」
「……ねえ、」
「馬鹿だ────本当に」
わけもなく胸が苦しい。しんどいくらいに苦しい。
絶えず締め上げられ続ける胸は潰れてしまうんじゃないかというほどに根拠もなく私を追い込む。深く、奥に、そして儚く響く。
クルクルと指に巻きつけていた髪をほどき、一束掬い上げると小さく口付けを落としてくる。
いつの間にか────猫は何処かへ逃げていってしまった。
「…どんな風に甘えんの?」
「何が───」
「…俺には見せない顔、すんの?」
「眞紘、」
「────んなの、嫌だ……」
抑揚のない平坦な声が僅かに重みをつけて耳の中で反復する。眉を顰め、声にならない声を出す眞紘は何度も髪に唇を寄せて私の心を締め上げた。
────夏らしくない夏の風が吹く。
眞紘の明るい髪を舞い上げるそれは、螺旋状に渦を巻きながら上空へと昇ってゆき…消えた。
「そう思って………いや、思うからこそ、馬鹿なんだよ」
「……ねえ、」
「馬鹿だ────本当に」
わけもなく胸が苦しい。しんどいくらいに苦しい。
絶えず締め上げられ続ける胸は潰れてしまうんじゃないかというほどに根拠もなく私を追い込む。深く、奥に、そして儚く響く。

