刹那、私の中の何かがヒュウ、と冷え切ったような気がした。
"何が"とか、"誰が"なんて一言も言っていない恭平の顔を私はどんな顔で見つめていたのか。
それに対する恭平も、敢えてその部分を言っていないかのように意味深な瞳をただただ向けてくる。
「戦国時代でもよくあった戦法だよ」
「…」
「自分の娘や女兄弟を敵の将軍のもとに送る。その代わりに攻撃はしないよ、ってね」
「…」
「彼女たちは頭首の家に生まれた時点で、その宿命を理解していた。彼女たちは国の繁栄のために使命を全うする。それだけのために──生きる」
「…」
「向こうの土地でどんなことをされるか、どんなことに利用されるのか、分からないのにね。分かりながら──敵地で暮らし、それでもその中で何かを見つけてゆくんだ」

