BLADE BEAST

恭平は、私が眞紘のことを聞こうとしたことを分かったのかもしれない。

コイツは分かっていないようで分かっている男だから、今、第三者でしかない恭平が口にできるようなものは限られているって、そういう意味がこもっていたのかもしれない。




「…ねぇ、莉央ちゃんはさ」

「…」

「絶大な力を誇る東西のヤクザが、どうして互いに勢力を上げてシマを奪いあったり、街全体を統一するなんてこともせずに、ただ一つの境界線なんてものを張って均衡を保っていられるんだと思う?」




それは謎がこめられた言葉だった。

知的なようで甘いようで何処と無くミステリアス極まりないトーンでそう言うヤツに、私は返す言葉が何も見つからなかった。

小さく喉を鳴らすだけ。

ガラス玉のような綺麗さをもつ恭平の瞳をただ見つめる。




「統一するってなったら抗争をするしかなくなる。だから余計な戦力を消費するより、協定を結んだ方がかなりローコスト」

「…」

「その方が双方に利益を及ぼしてくれる」

「…」

「互いに強靭な力を持っていたし、それなりに深い痛手を負いたくなかったんだ…。賢明だと思うけど…でも、分からないよね?隙を見て攻めてくるかも」

「…」

「相手のシマの方がカネが入ってくるって知ったとしたら、もしかしたら裏切るのかもしれない」

「…」

「けれど──抗争だけは、避けたかった……そんな東と西の二つの組織はどんな方法を取ったと思う…?」







さらなる靄が私を覆い隠してくるように、胸の中がまた何と無く騒ついたような気がした。