「待ってっ…、ぁっ…」

「かんわいー。もっと声出してよ?」

「んっ…」




駄目だ。

二人の甘ーい世界とやらはその勢いに拍車をかけるばかり。




シンプルなつくりの家の中、私は俗にいう合鍵というものを手にしたまま、茫然とその場に突っ立っていた。



すると、ここらではやくもイイ感じになってきたのか、女の喘ぎ声は些か出し過ぎなのではないかと言うほどに大きくなってゆく。

このまま私の存在に気づきそうもないし、そもそもこういうのを見ている趣味もないし、帰るか…。



そう思って肩につくかつかないかくらいの黒髪をサッと揺らして背を向ける。



前髪があるのは気に食わないからと、長く伸ばしたそれを横に流したヘアスタイルは割と気に入っている。

そういえば、毛先、痛んできたな。美容室行きたい。




そんな呑気なことを考えていたんだけれど、




「……莉央?」


――最中にも関わらず、晄はこうやってよく私を引き止める。